Versal™ AI エッジは、ワットあたりの AI 性能が最先端 GPU1 の 4 倍を実現し、自動運転、予測ファクトリ、ヘルスケア システムなどのリアルタイム システムや、航空宇宙/防衛分野のマルチミッション ペイロードなどのさまざまなアプリケーションに最適です。Versal AI エッジ シリーズは、単に AI に最適化されたプラットフォームではなく、センサーや AI からリアルタイム制御に至るまでアプリケーション全体を高速化でき、ISO26262 や IEC 61508 など安全規格を満たす最高レベルの安全性とセキュリティを実現できます。適応型演算アクセラレーション プラットフォームである AI エッジ シリーズは、業界で最も拡張性のあるデバイス ポートフォリオを提供しているため、開発者はこれらを活用してエッジからエンドポイントまでのさまざまな性能や電力要件に対応し、最先端のセンサー フュージョンや AI アルゴリズムをすばやく開発できます。
1: Versal AI エッジ VE2802 vs. Jetson AGX Xavier (MAX N-Mode)、ResNet50 224x224、batch=1
スカラー エンジンは、リアルタイム システムに求められる安全性とセキュリティを備えた電力効率の高いエンベデッド コンピューティングを実現します。デュアル コアの Arm® Cortex®-A72 アプリケーション プロセッサは、Linux クラスのアプリケーションを実行するのに最適であり、デュアル コアの Arm Cortex-R5F リアルタイム プロセッサは、最高レベルの機能安全 (ASIL および SIL) に準拠するため、セーフティ クリティカルなコードの実行に最適です。プラットフォーム管理コントローラー (PMC) は、三重冗長プロセッサをベースとしており、プラットフォームの起動、高度な電力/熱管理、セキュリティ、安全性、信頼性など、プラットフォーム全体におけるデバイスの動作を管理します。
Versal アーキテクチャの柔軟性は、適応型エンジンによるものであり、あらゆるセンサーの統合、インターフェイス接続、多様なワークロードに対応できます。並列性と確定性の両方を兼ね備えた適応型エンジンによって、センサー フュージョン アルゴリズムの実装と適応、パイプラインにおけるデータの前処理/後処理の高速化、リアルタイム レスポンス用の確定的ネットワークとモーター制御の実装、フェイルセーフ動作用のセーフティ クリティカルな機能の分離、ハードウェア冗長化とフォルト レジリエンスの確保などが可能になります。
AI エンジンと DSP エンジンで構成されるインテリジェント エンジンは、AI 推論、画像処理、モーション コントロールなど、エッジ アプリケーションで一般的な幅広いワークロードをサポートします。AI エンジンは、ベクトル プロセッサと分散メモリがアレイ状に配置された拡張性のある画期的なアーキテクチャであり、ワットあたりの AI 性能を大幅に向上させます。DSP エンジンは、前世代の Zynq™ アダプティブ SoC で実績のあるスライス アーキテクチャをベースに浮動小数点演算のサポートを追加しているため、ワイヤレスや画像の信号処理、データ分析、モーション コントロールなどに最適なエンジンです。
Versal アダプティブ SoC は、機能安全規格の ISO 26262/IEC 61508 やセキュリティ規格の IEC 62443 など、産業機器や車載アプリケーションの最も厳しい要件に対応するためにゼロから構築された製品です。Versal アーキテクチャは、ドメインごとに安全機能を備えて分割されており、一般的なエラーを監視して排除するためのグローバル リソースが含まれます。前世代のアダプティブ SoC を超える新しいセキュリティ機能により、クローニング、IP の盗難、サイバー攻撃に対する保護機能 (AES 暗号化/復号化、グリッチ検出など) が強化されています。
4 MB オンチップ メモリのアクセラレータ RAM を搭載しています。このメモリ ブロックはすべての演算エンジンからアクセス可能であるため、AI 推論などクリティカルな演算機能を実行する際に外部メモへアクセスする必要がなくなります。これにより、Versal アーキテクチャの柔軟なメモリ階層がさらに強化され、ワットあたりの AI 性能が向上します。また、アクセラレータ RAM は、リアルタイム プロセッサの OCM 容量を超えるセーフティ クリティカルなコードを格納する場合にも有効であり、ASIL-C や ASIL-D の要件を満たすことができます。
Versal アダプティブ SoC のプログラム可能な I/O により、あらゆるセンサーやインターフェイスへの接続が可能になり、今後進化するインターフェイス要件に合わせて拡張も可能です。設計者は、同じ I/O をセンサー、メモリ、ネットワーク接続のいずれかに設定し、必要に応じてデバイス ピンを割り当てることが可能です。さまざまなタイプの I/O で広範なスピードと電圧をサポートしており、レガシ規格と次世代規格の両方に対応しています。たとえば、サーバークラスのメモリ インターフェイス用の 3.2 Gb/s DDR、 ピンあたりのメモリ帯域幅が最も広い 4.2 Gb/s LPDDR4x、8 メガピクセルを超えるセンサーを扱うネイティブ MIPI のサポートなど、レベル 2 ADAS 以上に不可欠な機能を備えています。
AI 演算性能は、熱、信頼性、セキュリティ、安全性に関連する厳しい要件を満たすことに加えて、SAE レベル 3 以上を目標とする自動車のティア 1 サプライヤーや OEM メーカーにとって重要な要件となっています。Versal™ AI エッジ シリーズは、電力や熱的に制約のあるシステムにおいて、最高のワットあたり AI 性能を実現するように設計されています。ヘテロジニアス演算プラットフォームとして設計されたこの Versal AI エッジ アダプティブ SoC は、車両全体のワークロードに対して最適な処理エンジンを割り当てます。レーダー、ライダー、赤外線、GPS、ビジョン センサーの任意の組み合わせに対応するカスタム I/O、センサー フュージョンや前処理に対応する適応型エンジン、推論や知覚処理に対応する AI エンジン、そして安全性重視の意思決定に対応するスカラー エンジンなどがあります。Versal AI エッジ アダプティブ SoC は、車載アプリケーションの最も厳しい要件 (ISO 26262) に対応するために構築された AMD のオートモーティブ グレード (XA) 製品として一部です。
ロボット分野では、精密な制御、確定的な通信、マシン ビジョン、応答型 AI、サイバー セキュリティ、機能安全が一つの 「システム オブ システムズ」 に統合されます。Versal AI エッジ アダプティブ SoC は、ロボットの知覚を実現するヘテロジニアス センサーの融合、スケーラブルな軸数と正確かつ確定的な軸制御、セーフティ クリティカルな機能の分離、高速化された行動計画、動的なコンテキスト ベースの実行を安全に制御するための AI 技術など、これらをすべて単一のヘテロジニアス デバイスで実現し、モジュール構成のスケーラブルなロボット開発を可能にします。また、Versal AI エッジ シリーズは、機械学習を使用するリアルタイム分析を高速化し、IEC 62443 準拠のサイバー セキュアなネットワーク経由で予知保全および実用的なインサイトの獲得が可能になります。
Versal AI エッジ シリーズは、マルチミッション対応のドローンや UAV など、最も厳しい環境下でリアルタイム性と高性能が求められるアプリケーションに最適です。一つの Versal AI エッジ デバイスで、通信データリンク、ナビゲーション、ターゲット追跡や IFF (敵味方識別装置) 用のレーダー、観測用の電子光学センサーなど、さまざま入力をサポートできます。デバイスに搭載されたヘテロジニアス エンジンが、受信データとセンサー入力を集計し、前処理を実行して、波形処理と信号調整を実行します。最終的に低遅延の AI を実行してターゲット追跡や飛行経路の最適化、さらには敵対的な信号やチャネル攻撃を識別するためにコグニティブ RF を適用します。Versal AI エッジ シリーズは、マルチミッション対応の状況認識型 UAV に必要なインテリジェンスと低 SWaP (サイズ、重量、電力) の両方を実現できます。
より多くのポイントオブケア (POC) アプリケーションを対象とし、患者の安全性を損なうことなく、規制要件を満たすことが求められる中で、医療機器の小型化、携帯化、バッテリ駆動へのニーズが高まっています。Versal AI エッジ シリーズは、パラレル ビームフォーミングやリアルタイム画像処理を高速化し、より高品質な画像と解析を実現できる上に、長寿命なバッテリ駆動のポータブル超音波診断装置に適した電力効率を備えることができます。ヘテロジニアス演算プラットフォームとして設計された Versal AI エッジ シリーズは、パイプライン全体に異なる構造を実装します。適応型エンジンは、アナログ フロントエンドの制御など、アクイジション機能を実行します。AI エンジンは、最先端の画像処理技術を高速化したり、診断の支援や効率化を図るための機械学習を高速化します。Arm® サブシステムには、データ パイプライン全体のオーケストレーション、アップデート、およびインフラストラクチャを提供する Linux クラスの OS が含まれます。Versal AI エッジ シリーズは、携帯型から、デスクトップやカート ベースの超音波ソリューションまでスケーラブルに対応できます。詳細
VE2002 | VE2102 | VE2202 | VE2302 | VE1752 | VE2602 | VE2802 | |
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AI エンジン - INT8x4 (TOPS) | 11 | 16 | 32 | 45 | 101 | 202 | 405 |
AI エンジン - INT8 (TOPS) | 5 | 8 | 16 | 23 | 101 | 101 | 202 |
DSP エンジン - INT8 (TOPS) | 0.6 | 1.2 | 2.2 | 3.2 | 9.1 | 6.8 | 9.1 |
適応型エンジン – INT4 (TOPS) | 2 | 5 | 13 | 19 | 56 | 47 | 65 |
適応型エンジン – INT8 (TOPS) | 1 | 1 | 3 | 5 | 14 | 12 | 17 |
VE2002 | VE2102 | VE2202 | VE2302 | VE1752 | VE2602 | VE2802 | |
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アプリケーション処理ユニット | デュアル コア Arm® Cortex®-A72、48 KB/32 KB L1 キャッシュ (パリティおよび ECC あり)、1 MB L2 キャッシュ (ECC あり) | ||||||
リアルタイム プロセッシング ユニット | デュアル コア Arm Cortex-R5F、32 KB/32 KB L1 キャシュ、および 256 KB TCM (ECC あり) | ||||||
メモリ | 256 KB オンチップ メモリ (ECC あり) | ||||||
コネクティビティ | Ethernet (x2)、UART (x2)、CAN-FD (x2)、USB 2.0 (x1)、SPI (x2)、I2C (x2) |
VE2002 | VE2102 | VE2202 | VE2302 | VE1752 | VE2602 | VE2802 | |
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AI エンジン-ML | 8 | 12 | 24 | 34 | 0 | 152 | 304 |
AI エンジン | 0 | 0 | 0 | 0 | 304 | 0 | 0 |
DSP エンジン | 90 | 176 | 324 | 464 | 1,312 | 984 | 1,312 |
VE2002 | VE2102 | VE2202 | VE2302 | VE1752 | VE2602 | VE2802 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
システム ロジック セル (K) | 44 | 80 | 230 | 329 | 981 | 820 | 1,139 |
LUT | 20,000 | 36,608 | 105,000 | 150,272 | 448,512 | 375,000 | 520,704 |
VE2002 | VE2102 | VE2202 | VE2302 | VE1752 | VE2602 | VE2802 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
アクセラレータ RAM (Mb) | 32 | 32 | 32 | 32 | 0 | 0 | 0 |
総メモリ (Mb) | 46 | 54 | 86 | 103 | 253 | 243 | 263 |
NoC マスター/NoC スレーブ ポート | 2 | 2 | 5 | 5 | 21 | 21 | 21 |
CCIX PCIe® (DMA 付き) (CPM) | - | - | - | - | 1 x Gen4x16、 CCIX |
1 x Gen4x16、 CCIX |
1 x Gen4x16、 CCIX |
PCI Express® | - | - | 1 x Gen4x8 | 1x Gen4x8 | 4x Gen4x8 |
4x Gen4x8 | 4x Gen4x8 |
40G Multirate Ethernet MAC | 0 | 0 | 1 | 1 | 2 | 2 | 2 |
ビデオ デコーダー エンジン (VDE) | - | - | - | - | - | 2 | 4 |
GTY トランシーバー | 0 | 0 | 0 | 0 | 44 | 0 | 0 |
GTYP トランシーバー | 0 | 0 | 8 | 8 | 0 | 32 | 32 |
AMD は、Versal アーキテクチャを活用する開発を支援するため、さまざまな資料、リソース、設計手法を提供しています。Versal アダプティブ SoC を使用して開発を始めるときに、まず何から着手すべきか分からない場合には、インタラクティブなガイダンスを提供するデザイン フロー アシスタントを利用して開発の戦略を立てることができます。また、デザイン プロセス ハブでは、Versal に関するすべての資料が設計段階ごとに分類および表示されているため、必要な情報をすぐに入手できます。
Versal™ AI エッジ シリーズは、現在アーリー アクセスになっています。アーリー アクセス プログラムについては、営業に問い合わせページをご利用ください。Versal アダプティブ SoC アーキテクチャの設計ツールおよび設計手法について詳しく学びたい方は、次のリソースをご活用ください。
本質的にソフトウェアでプログラム可能なシリコン インフラストラクチャを持つ Versal アダプティブ SoC は、ゼロから設計されたソフトウェア中心の製品です。機能強化された Vivado™ ML エディションは、トラフィック アナライザー、NoC コンパイラ、データフロー モデリングなどの新しいシステム設計手法と開発環境を提供します。統合型の高速デバッグ環境を利用することで、スカラー エンジン、適応型エンジン、インテリジェント エンジンのデバッグとトレースを高速実行できます。
Vivado ML エディションをダウンロード >
Vitis™ 統合ソフトウェア プラットフォームは、包括的なコア開発キットとハードウェア アクセラレーション テクノロジを使用するライブラリを提供します。このプラットフォームは、クラウドからエッジまで効率的で使いやすい統合ソフトウェア環境を提供します。AMD は、オープンソース コミュニティの一員として、Vitis 統合ソフトウェア プラットフォームを無償で提供しています。またコードを変更せずに (または最小限の変更のみで)、既存のアプリケーションに簡単に組み込むことができる性能に最適化された豊富なアクセラレーション ソリューション ライブラリを提供しています。
Vitis™ 統合ソフトウェア プラットフォームをダウンロード >
AMD の Vitis Model Composer は、Simulink® および MATLAB® 環境でデザインを短時間で試行できるモデル ベースのデザイン ツールです。これにより、RTL および HLS ブロックを AI エンジン カーネルやグラフと一体化させて同じシミュレーションに組み込むことができるため、AI エンジン ADF グラフ開発やシステムレベルでのテストが効率化されます。Versal AI エンジンを Vitis Model Composer で活用する方法は、AI エンジン リソース ページをご覧ください。
Versal AI エッジ デバイスを使用する開発に関心がある方は、Versal AI コア VCK190 評価キットで今すぐ評価できます。Versal AI エッジ デバイスは、Versal AI コア シリーズと同じアーキテクチャを採用しており、スカラー エンジン (Arm® プロセッシング サブシステム)、適応型エンジン (プログラマブル ロジック)、AI エンジン*、NoC (プログラマブル NoC)、PCIe® や DDR4 などのコネクティビティ ブロックは共通しています。評価キットには、開発に必要なものがすべて含まれているため、システム検証の実施、主要インターフェイスの評価、アダプティブ SoC 設計手法の適用などをスムーズに行うことができます。Versal AI エッジ アダプティブ SoC の評価キットは、2022 年後半にリリース予定です。
Versal AI コア シリーズ VCK190 評価キットの詳細 >
*AI エンジンは、VE1752 デバイスで利用可能です。その他の Versal AI エッジ デバイスには AI エンジン-ML が搭載されています。
AMD のトレーニングおよび資料は、開発者が次回のプロジェクトで十分な生産性を発揮できるように実践的スキルと基礎知識を提供します。
Versal ACAP を使用したデザイン: アーキテクチャと設計手法
Versal ACAP を使用したデザイン: ネットワーク オン チップ
Versal ACAP を使用したデザイン: 消費電力およびボード デザイン
Versal AI エンジンを使用したデザイン 1: アーキテクチャおよびデザイン フロー
Versal AI エンジンを使用したデザイン 2: AI エンジン カーネルを使用したグラフ プログラミング
Versal AI エンジンを使用したデザイン 3: カーネル プログラミングと最適化
AMD は、Versal アーキテクチャを活用する開発を支援するため、さまざまな資料、リソース、設計手法を提供しています。Versal アダプティブ SoC を使用して開発を始めるときに、まず何から着手すべきか分からない場合には、インタラクティブなガイダンスを提供するデザイン フロー アシスタントを利用して開発の戦略を立てることができます。また、デザイン プロセス ハブでは、Versal に関するすべての資料が設計段階ごとに分類および表示されているため、必要な情報をすぐに入手できます。